ADHDの経営コンサル情報日記

ADHD(注意欠如・多動性障害)特性を持つ経営コンサル会社社員の日記です。メンタルヘルス、健康、経営、業務効率化など、関心のあることについて書いていきます。

ADHDの診断では、どんなことを調べるの?

 私は、ADHDの確定診断を受けたわけですが、受診するにあたって、どんな検査をするのか知っておきたい、という人もいるかも知れません。そこで、この記事では、ADHDの検査ではどのような検査をするのか、ということをお伝えしようと思います。

まずは、ADHDの原因を知りましょう

 ADHDの症状の主な原因として挙げられるのが、脳の機能の問題です。

 ADHDの人は、の前頭葉の働きが弱いためにさまざまな症状があらわれるといわれます。

 前頭葉は脳の前方に位置し、この中の前頭前野と呼ばれる部分は、人の理性や思考、整理、実機能を司っています。感情や、感覚、意欲などにも深いかかわりをもっています。

 この前頭葉の働きが弱いと、考えをまとめたり、理性的に考えたり、脳全体で感じ取った情報を整理し、取捨選択することが難しくなります。そのため、目に入ったものや、聞こえた音など覚からの刺に影響を受けやすく、その結果、落ちつきがなくなったり、理性的な考え方が苦手であったり、集中することが難しかったりします。

 ADHDの人の多くは知能に問題はありません。自閉症スペクトラムのような、他の脳機能の障害を併発している場合もありますが、 ADHD単独では知能にはさほど影響がないのです。

 

前頭葉

神経伝達物質の働き
 前頭葉がうまく機能するためには、ノルアドレナリンドーパミンなどの神経伝達物質の働きが重要です。神経伝達物質とは、並んでいる神経細胞と神経細胞のすき間(シナプス間隙④)で働いて、隣から隣へと情報を伝える化学物質です。

(下の図で見ると、②や④にある小さな丸い物質で示されてます)

 

 ドーパミンは意欲や学習機能、運動機能、性機能などにかかわりがあります。

 ノルアドレナリンも意欲や集中力に関係がありますが、ドーパミンが前駆物質となってノルアドレナリンを増やすこともあります。

 

 ドーパミンは、人が集中したり、注意を向けたりするときに、神経細胞の末端(シナプス)から放出されます。役目が終わると、シナプスにあるトランスポーターという物質からもとの神経細胞に取り込まれます。(再取り込み。下図では⑧のようにトランスポーターによる再取込が表現されています。)

 ADHDの人の脳では、このトランスポーターの働きが過剰なためにノルアドレナリンドーパミンが取り込まれ過ぎてしまい、結果的に不足しているのではないかと考えられています。神経細胞同士の情報リレーがうまくいかず、前頭葉の働きが弱くなっているのです。

Synapse diag1

(wikipediaより引用)

物理的に調べられないADHD。診断基準で生活への支障を調べる

 
 こういった神経の仕組みから、ADHDの診断ができれば分かりやすいのかもしれませんが、現実の医療の現場では神経伝達物質の流れを簡単に調べられるわけではありません。また、このような脳や神経伝達物質の仕組みによる原因というのは、現時点ではまだ仮説であって、ADHDの原因がはっきりと分かっているわけではありません。
 
 そのため、ADHDの診断には、「症状によって生活に支障がでているかどうか」を調べる診断基準があります。

 

 ADHDの治療の目標は、「患者が困っている、日常生活の支障を取り除いて、快適な生活が送れるようになること」のはず。

 

 私のように、ADHD的な特性が原因で、学業や仕事で道を踏み外してしまったような人にとっては、この目標を外さないことがとても大切だと思えます。

 

 どんな病気でもそうですが、医師によっては、その目標を外してしまう人がいます。たとえば、患者が「おなかがイタイ」と訴えているのに、「胃カメラで見ても何もないから大丈夫ですよ」と言って患者を家に帰してしまう医者とか。

 

 ADHD治療においても同じことで、治療の目標とすべきなのは「どの病気なのか診断すること」ではなく、診断した後、いろいろな治療を通じて、患者の日常生活を改善していくことだと思います。

 

 だからこそ、ADHDの診断では「症状」を最優先する診断基準になっているのでしょうね。

 

診断基準の種類

 ADHDの診断基準で、広く医療現場で使われている基準はアメリカ精神医学会のDS M-5というものです。書籍として発行されてますが、精神疾患の診断基準をまとめたガイドライン的な本で、アマゾンとかでも普通に売っています。(2万円ちょっとの値段で、高いので精神科医向けの本ですね)

 またWHO(世界保健機関)の「成人期のADHDの自己記入式症状チェックリスト」も使用されます。これは、ネット上でも普通に見れます。

https://www.adhd.co.jp/doctors_lib/pdf/asrs_checklist.pdf

 そのほかに問診で生活の困難さや、普段の様子、子どもの頃の様子、生活環境や、他の精神疾患の有無などを聞きとり、それらを考慮して診断します。同時に知能検査を行うこともあります。

 知能検査により、似た症状のばかの発達障害との鑑別もしやすくなり、本人がどういった能力が高いか、あるいは低いかがわかります。

 現在日本でADHDと診断される場合は、相当生活に支障が出て困っていると考えられるようなレベルです。

 ですから「ADHDと診断されなかったからADHDではない」と思う人もいますが、実際にはADHDはあるなしで区別するのではなく、程度に連統性があり、そうでない人 との間にはっきりした境界線はありません。ADHDと診断されなくてもその特性によっ て困っていて、なんらかのサポートを必要としている場合も多いのです。

 

 

私の診断結果

 私は、検査の際、『WAIS-Ⅲ』という検査を臨床心理士さんの監督のもと受けました。その結果が以下の内容です。ちなみに、私は40代前半男性で、検査日は昨年の11月半ばごろです。

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WAIS-Ⅲ検査結果●

■検査値..[]内はそれぞれの水準を示しています。

●全検査IQ120… [高い] <90%信頼区間:116~123>
言語性IQ124…肩い] 動作性IQ109…[平均]
●群指数
【言語理解】118…[平均の上] 【知覚統合】116…[平均の上]
【作動記憶】115…[平均の上] 【処理速度】89…[平均の下]
■群指数別にみた特性
【言語理解〕
◎ことばの理解や表現力、言語概念、言語による推理・思考力、習得した知識等を測定し
ます。
「単語」「類似」「知識」とも平均を上回りました。語彙は極めて豊富であり、単語の意 味理解、言語概念形成、言語表現とも良好です。抽象的な単語の意味を具体的にわかりや すく、かつ要点をまとめて説明することが出来ていました。社会適応の良さと関連する理 解」の得点も非常に高く(16点)、社会生活を送る上で必要な知識を、十分に有していま す。

【知覚統合】
◎視覚や空間認知、非言語(視覚、直観)による推理力や思考力を測定します。
図形を素早く知覚し操作する力や、空間にある物体について位置関係を維持する能力が高 く、視覚的長期記憶も良く保たれています。「積木模様」の施行スピードはやや遅いもの の、方略を持って組立てる様子が観察されました。論理的な思考力があり、図形などの抽象 的刺激の認知処理も問題ないと考えられます。

【作動記憶】ワーキングメモリー
◎課題への注意・集中。聴覚的短期記憶力。口答指示の聞き取りなど学習の基礎となる力 も測定します。
課題によってばらつきがありました(「算数」「語音整列」11点、「数唱」16点)。「数 唱」では、順唱より逆唱の成績が良い(両方とも最大スパンが8桁)との結果でした。施 行中に方略を編み出していたとのことで、流動的推理(新しい課題に直面したときの知的 操作力)の高さが伺われます。

【処理速度】
◎資格刺激を速く正確に処理する力、注意の持続性、視覚的短期記憶を測定します。
他の3群より低い値となりました。施行の様子からは筆記技能は問題ないと考えられ、視 覚-運動の協応の苦手さがあるかも知れません。補助検査の結果からは、視覚的短期記憶 の弱さが認められます。

■【総合所見】
全検杳査IQは120で、数値上は「平均の上~高い」水準でした。
言語性IQが動作性IQを上回り、群指数にも差があることから認知面のアンバランスが示唆 されます。
群指数の比較では【言語理解】【知覚統合】【作動記憶】とも高い値を示しましたが、【 処理速度】のみ平均を下回りました。
ことばで聞いて、考え、表現する力はとても高く、語彙の豊富さからも高度な結晶性知能 を有すると考えられます。既に知識として身についている事柄や、具体的なイメージが持 てることには十分な力を発揮できるようです。【知覚統合】の高さから、新奇な情報に基 づく課題処理能力や、推論する力が優れていることが示唆されます。ワーキングメモリー の力も高いとの結果ですが、これには知的操作力の高さが寄与していると思われます。実 際には、注意・集中にかなりの努力を要しているのでは、と推測されます。

一方、【処理速度】は平均値を下回り、単純な視覚情報を正確に読み込み作業する力が弱 いことが示唆されます。視覚的短期記憶、視覚的走査や追跡の苦手さがあり、事務処理等 のスピードは遅くならざるを得ないのではないでしょうか。単純な課題に対して、より多 くの認知的な努力を必要とするため、精神的に疲れやすいとも考えられます。

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 この結果だけ見ると、医師もADHDという診断は下しにくかったようです。私の場合、【処理速度】の項目がやや低く、『視覚的短期記憶、視覚的走査や追跡の苦手さ』というムラはあるものの、知能も数字上は高く、典型的なADHDの人のように多動の傾向は一見して分からないからです。

 

 

 しかし、書類のミスなどが多く実際に仕事をするうえで支障をきたしていること、忘れ物や無くし物の傾向が子供のころから続いていること、過去にギャンブル依存の履歴や離職を繰り返すなど社会生活上の問題点も発生していることなどから、健常者とADHDのボーダーライン的な状態なのかもしれない、と判断されたようで、薬物治療を低用量から始めてみて、ようすをみてみよう、ということになりました。


『子供のときから現れる』のも、重要な診断の根拠

 ADHDでは、診断基準とは別に、特別支援教育のめやすとして、文部科学省が発表したADHDの定義が使われることがあります。文部科学省によるADHDの定義とは次の通りです。

ADHDとは、年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力、及び/又は衝動性、多動性を特徴とする行動の障害で、社会的な活動や学業の機能に支障をきたすものである。
また、7歳以前に現れ、その状態が継続し、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。
(平成15年3月の「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告ご参考資料より抜粋)

 

 私の場合、子ども時代をよく知る両親と臨床心理士さんが面談したり、小学生の時の通知表を確認してもらったりして、子どものころから忘れ物が多かったりしたことを確認してもらいました。ただ、多動の傾向はあまり見られなかったため、診断に迷いが生じたようでした。

障害?個性?治療の必要性を考える

 ADHDの特性は、あるか、ないかだけで判断されるものではありません。特性のあらわれには連続性があり、その強弱と生活への支障の度合いで治療の必要性を判断します。特性に強く当てはまっても生活に支障がなければ治療の必要性は低いと考えられます。

 ADHDの特性は、治療の必要がなければ障害ではなく、その人の個性なのです。実際、会社の経営者や、芸術家のような仕事ではADHDの特性を持っていても適応して、才能を発揮している人が多いですしね。むしろ、ADHDの特性をもっているからこそ、輝けるのかもしれません。

 私の場合は、ADHD的な特性を持っていますが、それは相対的に見て強いわけではありません。私よりずっとひどいADHDの人がいっぱいいて、私の場合は健常者とあまり区別がつかないくらいです。この点は、医師にもいわれました。『あなたの場合は、今までADHDと診断してきた人と比べて、言われなければなかなか気づかないですよ。普通は、もっとはっきりとADHDと分かるものです。』と。

 しかし、とても困っていて、生活に支障を来しているのはまちがいないので、症状が軽くても治療に踏み切ったわけです。

 まあ、私の場合は、自分自身の努力でかなり状態を改善してきていたので、治療の必要があるのかどうか医師が判断に困ったのかもしれません。ギャンブル依存や離職などの社会生活上の問題点も、ある程度は解消されているので、世間一般的には何の問題もない人に見えるでしょうから。